SCIENCE FICTION

宇多田ヒカルが、人生初のベストアルバムを出すらしい。

 

www.utadahikaru.jp

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前まだベストアルバム出してなかったのかよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初めに言っておくと、私は宇多田ヒカルの大ファンではない。

数いるアーティストの中では好きな方で、一般レベルで曲を聴いて、カラオケで歌うレパートリー内に幾つか彼女の曲があって、といった程度である。彼女の来歴なんぞ1ミリも知らないし、ディスコグラフィなんて気にしたこともない。

 

 

 

だからシンプルに、このニュースを見て一番最初に思ったことは「遂に出すんだ...!!」とかでもなく「まだ出てないのマ?」である。

 

 

 

それくらい彼女のことを何も知らない。知らなさすぎている。すげえベテランアーティストという位置付けでしかない。「へえ~そうなんですね、おめでとうございます!」と、貰っても貰わんでもいいようなやんわりとした拍手を送るのが精々なくらい極限(マキシマム)知らない。

 

 

 

だからといって、他のアーティストと一括りにするにはあまりにも影響を受けすぎているとも思う。

折角なのでこの機会に、宇多田ヒカルのやべぇところをにわか私なりに書き残しておきたい。

 

 

 

 

 

 

基本的に私は

音楽を“メロディー”で愛すタイプだ。

勿論歌詞は大事だが、それは自分がアウトプットする際に気をつけているところであって、聴いていて心地良いものでない限りはそこまで掘ろうという気にすらなれない。

洋楽やKPOPも、英語や韓国語の音が好きだから聴いているし、どれだけ歌い方や声、歌詞が好きなアーティストの曲でもメロが愛せなければいいね!と親指を立てることも無い。

 

 

そんな中で、宇多田ヒカルは恐らく唯一の歌詞で愛せるアーティストだと思っている。

 

 

 

あ、ちなみに、記事を読むにあたって擦り合わせなければいけない価値観だと思っているので共有しておきますが、漏れは「音楽(総合評価)は最終的に技術じゃなくて好みやろ!」と思っているヨ。しかしその上で"作詞のバケモン"は好みとかすっ飛ばして確実に存在してる概念だと思っているヨ。

 

 

 

ニーチェの名言が今世まで人を翻弄し続けているように、詩だけで人の心を満たすアーティストというのは、間違いなくいる。言葉の魔術師は、います(バカデカ大声)。

なので私の好み云々はさておき、宇多田ヒカルが"それ"である、という自論を一旦受け入れた上でこの記事を読んでください。これは命令です。契約すると言いなさい。

 

 

 

 

 

話を戻す。

 

"作詞のバケモン"

と一口にいっても色々なタイプがいる。個人的によく注目してしまうタイプを三つほどあげてみる。

 

 

①些細なことをめちゃくちゃオシャレに、でも簡潔な言い回しに変換できる人

aikoやBack Numberなんかがこのタイプだと思っている。

 

 

長い間の片想いを「伝えたかった事は 今も昔もずっと同じままだよ」と言ったり。

複雑な恋愛模様を「不安なのは貴方のせいじゃない あたしの想いが洋服の袖の色 いつまでも涙で変えるから」と表現したり。

自分の元に戻ってきて欲しいくせに「夏を通り抜ける度に私は綺麗になるの お見せできなくて残念だわ」と強がったり。

 

 

日本語ならではの表現力というか、行間を読むことを半ば強制されているこの国ならではの美学なんじゃないかと思っている。兼ねてより私たちは「愛してる」を「月めっちゃ綺麗で草」って言ったり、恋煩いを五七五七七とかいうくそ焦ったい文字数に当てはめたりと、回りくどいのが好きなのだ。例に漏れず私もそうだということ。

 

でもこれは自分で書こうとすると案外難しい。真意から近からず遠からずみたいな、絶妙な距離感を突くのがこの人たちはあまりに上手すぎる。絶対平安貴族だったんだろうな前世。好き。

 

 

②小さな発見をくれたり、見落としていたことを改めて考えさせてくれる人

恐らく私の好きなアーティストは大概ここに当てはまる。

ふとした気づき、輪郭のぼやけたものに手を加えてピントを合わせる力、考えもしなかったことに着目する思想、それを端的に歌詞に盛り込む技。すごい。やってることはブログやTwitterに近い。でもすごく響く。なんで?

はるまきごはん、Indigo la End、なとりなんかがこのタイプ。

 

 

家族愛について「選べないのに何故必要なんだろう」と悩んだり。

失恋を引きずり続ける中で「進むから美しいはずなのに」と自身を責めたり。

結局恋愛なんて「全部君次第なんだ それで、よかった」と呟いたり。

 

 

正解のない問題を取り上げているのに、これ以上の正解が見つからないところまで煮詰めている感じが好きなんだと思う。説得力があるというか。

...いやでもこれは向こうに説得力があるのが先なのか、私が歌詞に納得しているからそう感じているのが先なのか分からんが。

 

 

③信じられないくらいストレートな言葉で、爆弾を落としていく人

大変お待たせしました。本題です。

もう別名宇多田ヒカルタイプでいい。というか、宇多田ヒカル以外にここまでインパクトのあるわかりやすい詩を書けるアーティストを私は知らない。

 

 

お前ら、宇多田ヒカルの歌詞をまじまじと読んだことがあるか?

完全初見で新譜を聴いた時に、ありえないくらい耳に入ってくる歌詞にやられて卒倒した事があるか?

一体人生何周目でこんな歌詞が浮かぶんだと宇宙猫になったことがあるか?

 

 

彼女の凄さは、一歩間違えたらめっっっっちゃダサくなるであろう歌詞を、信じられんくらいの重たさを孕んで書けることである。

いくつか例を出す。

 

 


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君に夢中

Oh 人生狂わすタイプ

Ah まるで終わらない deja vu

バカになるほど 君に夢中

 

 

「人生狂わすタイプ」という歌詞を聴いた時に、マジでドン引きしたのを覚えている。

たった八文字。でもこれだけで、この恋がとても穏やかなものでない事は想像に容易い。もしかしたら後ろ指刺されるような恋愛になるかもしれないし、いっそ出会わない方が良かったんじゃないかとも思わせるフレーズである。堕落していく自分を客観的に見ている要素も伺える。

 

 

この情報を、感覚を、たった一言で表している。しかも誰が読んでも伝わるくらいには簡単な言葉で。それがどれほど難しいのかは、世の中の音楽が証明してくれている。最近の音楽は、良くも悪くも難解なものが増えた。曲も歌詞もメロディーも、全部がややこしくって絡まり合っている。それはそれで大好きなんだけどね。

 

 

というか、これぐらい素直なワードが仮に思いついたとしてもめちゃくちゃ軽〜〜〜いニュアンスにしかならないから"誰も出来ない"が一番近いと思う。

 

 

 


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これのサビなんかがいい例だと思うのだけれど、

 

幸せになろう オフィシャルな野望

明日は今日よりも... (ヲー!)

恋人になろう 手繋いで歩こう

貴方を誰よりも... (ヲー!)

幸せになろう 悲しみは利用

寄り道もしたけど... (ヲー!)

今すぐに会おう 思い出は昨日

明日は今日よりも... (ヲー!)

 

 

 

 

 

 

 

おいおい宇多田ヒカルまじかよ、と思った事だろう。

 

 

ヲー!ではない。全くもって。

 

 

湘南乃風辺りが同じような歌詞を書いていてもぱっと見おかしくない気がする(馬鹿にしていません)。現に彼らは真夏⚡️☀️のjamboreeにレゲエ < 砂浜 << bigwave!!して歌っている(馬鹿にしていません)

 

 

でもつまり彼らの場合、この歌詞だったらアゲ↑な曲のほうが合うやろ^^ と思っているのである。正直わかる。

誰がこんなクラシックみたいな歌と声に「ヲー!」「許されぬ恋ってやつ?」「ライバルはエビフライだよ」「ゼンセきっとチョコレート」って歌詞当てようと思うんだよ。少なくとも私ならそう思う。

 

 

でも宇多田ヒカルはこれくらい素直な詩を書いても軽さやチャラさがでない歌を歌えてしまうので、寧ろ相性◎なんですね。いいとこ取りしている。

 

 

 

やべえ歌詞はまだまだある。

 

 


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有名どころだが、全体を通して非常〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜に好きな作品なので共有したい。

 

家族のために頑張る 君を盗んでドライヴ

全ては僕のせいです わがままに付き合って

二時間だけのバカンス いつもいいとこで終わる

欲張りは身を滅ぼす 教えてよ、次はいつ?

ほら車飛ばして 一度きりの人生ですもの

砂の上で頭の奥が痺れるようなキスして

 

 

特に好きなところを選出した。

難しいことは一つも書いていない、小学生でも何をしているか分かるくらいの文章である。

 

家族のためにせっせと働く君(椎名林檎)を好き故に盗んで、二時間ばかりのドライブに勤しんでいるわけだ。僕のわがままってことでいいからと言い訳まで添えて。欲張りは良くないと思いつつ、すぐさま次いつ会えるか聞いてしまうくらいには、相手が好きなんだということがわかる。

 

 

言葉の簡易さと、想いの質量が一致しなさすぎる。バカ重感情であることなんて読んで一発で分かる。「好き」も「愛してる」も「一生側にいる」も言ってないのに、密度の高い純愛だと伝わってくる。

 

 

てか「頭の奥が痺れるようなキス」ってフレーズ、マジでやばくないか?これ以上言い表せないくらいの大正解だと思っている。

 

 

あと歌詞とはズレるけど、映像も大好きなので是非見て欲しい。二人のお揃いぱっつんボブと、遠い惑星に逃避行するような演出が、お忍びデートみたいな感じをこれでもかと滲ませていて最高すぎる。ああ本当に等身大の二人を描いたのかな、と思わせてくれる。ずっと美しくて、穢れがない。

 

最後、一切目線を合わせず抱き合う二人を見ていると、お互いがお互いに別々の人生というか、居場所があるんだなと嫌でも思わされる。それがちょっぴり切ないね。

 

 

 

 


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これはベストアルバムに収録されない楽曲だが、大変好きなフレーズがあるので最後に共有する。

 

愛してる、愛してる

薄情者な私の胸を

こうも絶えず締め付けるのは 貴方だけだよ

 

愛してる、愛してる

一人きりが似合う私を

今日も会えず泣かせるのは 貴方だけだよ

 

 

もう私から説明する事は何もない。分かるか、分かるだろ、分かってくれ。

 

 

 

『空想科学』

ベストアルバム名がSFって、マジでどういう事?自分の過去作全てがフィクションだったとして、それをこの歳になって科学的に証明してみせるよってこと?ごめん私も何言ってる?

 

 

個人的には未発表の新曲、ReRecの『Addicted to You』、NewMIXの『Beautiful world』,『Flaver of life』辺りが楽しみです。好き曲いっぱい入ってるし買ってもいいかなと思うけど、買ったら全国ツアーの特別エントリー券ついてくるみたいでちょっと怖い。

 

 

だってそんなのついてきちゃったら、絶対応募してしまう。倍率鬼だろうから外れるだろうけど、外れたら今度一般応募でも当てたくなってしまう。

宇多田ヒカルのライブなんて、人生で一度でも行ってしまったら、なんか音楽人生全て塗り替えられそうで怖いのだ。無量空処食らいそう。それがちょっと恐ろしくて円盤購入まで渋ってしまう自分がいる。生歌どれくらいやばいのか、もう想像もできない。あ〜絶対死ぬんだろうな、くらいしかわからない。怖すぎる。

 

 

興味がある人は是非買ってください。で、ライブ応募して、当選して、死レポください。

よろしくおねがいします。