Ghost in The Shell

好きだーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!


_var_mobile_Media_DCIM_117APPLE_IMG_7216.JPG




初めに言っておきますけど、映画通や原作ファンからの評価はものすごーーーーーーーーく悪い作品です。良くて微妙。悪い〜微妙の間を彷徨っている作品です。でも私は好き。映画通だったら好きじゃないかもしれないなら、映画通じゃなくてよかったとまで思う。






体に機械を埋め込む、又は機械に改造する「電脳化」が当たり前になった時代。人口の75%以上が電脳化を受け入れている、そんな時代。
サイボーグに人間の脳だけ取り入れた「人の心を持つロボット」として誕生した主人公ミラ。人間やAIよりも優れる彼女は、高度なサイバー犯罪を取り締まる政府直属機関「公安9課」の少佐として日々腕を振るっていた。
ミラはある日に起きた事件をきっかけに、自分の過去、人間と機械の共存、電脳化について考えることになる。


ミラを中心とした壮大な自分探しの旅がテーマの物語。







_var_mobile_Media_DCIM_117APPLE_IMG_7217.PNG
_var_mobile_Media_DCIM_117APPLE_IMG_7219.PNG

ティザームービーのこのシーンを一目見た時から見に行かなくては、と思った。実際1人で足を運んで、感激して、今の今までずっと自分の中に残ってた。一年越しにBluRayをやっと購入して、見て、やっぱり素晴らしい作品だと思った。





この物語は人間と機械、つまり無機物と生物がごちゃごちゃに混ぜ込まれた世界観で描かれていく。でも見ている中でそれらに大きな差は感じない。というより人間が限りなく無機物寄りに描かれていて、言ってしまえば「生」を感じさせない。



人間の美しさは理屈では表せない「生」の複雑さにあると私は思ってる。同時に機械は、全てを理屈で片付けられる精密さが美しい。
この映画はそれらの矛盾を上手く掛け合わせて化学反応を起こし、綺麗に消化させていると思った。見た目からも中身からもそう思わせる描き方をしていて好きだった。



何より、それを感じさせるのが全身サイボーグのミラではなくて、目や腕や臓器等のほんの一部だけを電脳化した人間だという所が大事だと思う。
登場人物内で最も人間から遠いミラが1番人間らしく、身体が人間だと言いきれる人物の方がよっぽど無機物らしかった。このギャップが「人間たらしめるもの」は一体何なのかと考えさせてくる。




内容が完全にSFなので、街の外観やちょっとした道具までとにかく機械化しているんだけど、そのデザインが本当に魅力的で永遠に見ていられる。


想像して欲しい。
例えば、渋谷にある大きなモニター広告が3Dになったら。
携帯せずとも、使いたい時に手からポンとデータ化したスマートフォンを出せるようになったら。
聴いて欲しい曲を指紋認証1つで、相手の電脳化した耳に流すことが出来たら。
見た物をそっくりそのまま相手の脳にデータ化して送ることが出来たら。
記憶を全て書き置きして忘れることの無いように出来たら。


これら全てを叶えた世界が、『Ghost in The Shell』の舞台。如何にやばくて近未来的か分かって頂けたと思う。



そんなやばくて近未来的な街は案外綺麗ではなくて、物という物、人という人、概念という概念で溢れかえってる。
スポーティーでスマートなビジュアルの車がスロープみたいな道路をビュンビュン駆ける中、生活区間のアパートは築何百年を思わせる荒廃団地そのものだったりする。
昼夜問わずビルの電光が照らす海は汚く、浮かぶ船は豪華客船でもなく錆びついた小さな漁船。
立派な社ビルの裏路地にはヤクザが集うバーやクラブが立ち並んでいて、買い物だって商店街みたいな信頼できるか怪しいようなお店で行われている。




そして公安9課も例に漏れずそうなんだけど、この世界には「国」という文化が存在してない。多文化なんてレベルじゃない。
黒人白人黄色人が集い、言語は英語日本語ごちゃ混ぜで、街の店看板には中国語台湾語が綴られ、建物の外装は古き良きアジア式だったりヨーロッパ式だったり、かと思えば高層マンションやビルが所狭しにそそり立っていて、もう訳が分からない。めちゃくちゃだ。めちゃくちゃすぎる。




公安9課も例に漏れず、って言ったけど、役者8人ほぼ全員国籍が違うの。日本、オーストラリア、デンマーク、フィジージンバブエニュージーランド。凄くね?国際会議かよ。
なのに役の名前は結構日本らしいんですよね。明らか欧米系の顔つきなのに役名はトグサ、イシカワ、サイトーとかね。これは原作からそうなんですけど、実写化したら確かにそうなるよなぁという不思議な感覚があった。



その内の日本人キャストの1人が北野たけしで公安9課のボス役なんだけど、皆は英語で会話する中、彼だけはまんま日本語で終始喋る。英語喋れないからねあの人。
でもそれが違和感がないというか、敢えて言語を統一しなかったお陰でこの世界のなんでもあり感が一層強まるというか。




うん、いい。とてもよかった。「めちゃくちゃ」なのがこの世界の象徴なんですよね。でも非現実的じゃなくてすごくリアルに描かれているから、ファンタジー色が強過ぎなくてすぐそこまで迫って来ている世界に思える。数十、百年後にはこうなってるよと言われても頷ける。その部分が原作のアニメと見事に合致してて素晴らしかった。



監督がインタビューで「原作へのリスペクトを表したかった」って何度も言ってたけど、凄く伝わった。オリジナル要素が含まれてるからガチガチの原作ファンには呑み込めない所もあるんだろうけど、この丁寧すぎる世界観作りだけでも十分評価されるべきだと思う。



ところで北野たけしの演技初めて見たんだけど、なんて言うの...こう...よかった。怪我の後遺症のせいもあるけど、台詞回しは全然うまいわけではない。なんならお前それ棒読みじゃね?という感覚に近い。けど、なんだろう...役のせいもあったのかもしれないけど、台詞で演じるタイプではない感じだった。

「背中で語る」なんて言葉があるけど、彼の演じた荒巻課長最大の見せ場でまさにそう思った。動かず沢山のことを語ることが出来る役者なんだなぁと思った。世界のキタノたる所以なのかもしれない。
他のキャストからも彼の事を前から尊敬してたとか、監督作品全部見たとかいう声が上がっていて、プロから見ても魅力的に映る役者なんだなぁとしみじみしてしまった。
それにしても貴方ガンアクションなんて大層なこと出来たんだね...




ところで原作ファンといえば、この作品はちゃんとそういう人達にも認めて貰えるような作品作りを怠ってないです。特にキャラメイク。
中でもやべぇ(褒めてる)のが第2の主人公バトー。
_var_mobile_Media_DCIM_117APPLE_IMG_7223.JPG
_var_mobile_Media_DCIM_117APPLE_IMG_7222.JPG

....え、似すぎじゃない?大丈夫?
作中で眼球を火傷するのでこんな感じに義眼なんですが、生身の人間にこのメカメカしさ取り付けても何とかなるんだな...すげぇな。



見た目もさながらだけど、役作りも本当に素晴らしくてバトーのキャラクターを完全再現してたと思いました。
ピザとビールと女が好きで、無類の犬好きで、ジョークを言うことに長けている親しみのある男。ミラの唯一無二の相棒であり、彼女の事を安心させてあげられるたった一人の存在。まさにバトーでした。



唯一私もうーんと思ったのは、ストーリーの薄っぺらさ。アニメのストーリーに肉付けしている筈なのに何かそれ以上に内容がない。レビューにもそういった声が結構あって、それは納得しました。



ただ私が今まで「ここが良かった!!!」と挙げてきたところが尽く批判の対象になってるのも事実で。悲しい。1999年公開のマトリックスよりも負けてる、と言ってる人も居た。個人的にはマトリックスとこれは同じSFでも、比べられないジャンルの壁があると思ってるんだけどなぁ。(その人は2017年見るだけ時間の無駄映画ランキング第2位にこれをあげてた。泣ける)



結局のところ、どうしてこんなに心惹かれたかって私が頭の中で描いていた理想のサイバーパンクを全部叶えてくれたからだと思います。サイバーパンク大好きな人間なので、この作品本当宝箱みたいなんですよね。何処見ても宝石。ありがとう。本当にありがとう...この作品が作られた時代に生きてて良かった。


世間がこの作品をどれだけ貶そうと、私は一生この作品を愛して生きていこうと思います。好きなものは好きだと声を大にして生きていきたいのです。




来年も沢山の「好き」に触れて生きていこうね。今年のLINE BLOGの書き収めがまさか映画レビューになるとは思わなかった。本当は最近読んだ面白い本のレビューとか、人生初狂言を見に行った話もしたいんだけど、それらは来年書けたらいいかな。


去年の12月からブログを書き始めたので気づけば一年経ちました。計14の記事、御愛読ありがとうございます。
来年もしょうもない掃き溜めを覗いてやって下さい( ¨̮ )
良いお年を👋🏻