滑稽だから演劇が好き ~劇場版『CATS』ネタバレビュー~


オチなしです。
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絶対に見ようと思っていて。見る前から「とんでもない駄作」と評判だったので、逆にどれだけ酷いのかを楽しみに見に行ったぐらいなんですけど。


これは世論の通り「とんでもない駄作」だと思う。
でも個人的にはもう一度見たい作品。








◎劇場版『CATS』がここまで不評な理由
制作発表された時点で相当な反発を食らってたぐらいなので、『CATS』が好きな人には想像容易かったんでしょうけど。そもそも『CATS』自体が映画という媒体に向いてないんですよ。
個人的に向いてないと思うところを幾つかあげてみる。


①ストーリーの奥行きが皆無
ロンドン市街ごみ捨て場。年に一度開かれる猫の舞踏会では、新しい人生を歩むことが許される1匹の猫が選ばれる。その栄えある1匹になるため、今宵ジェリクルキャッツ達は歌い、そして踊る。

話としてはこんな感じ。この数行で収まってしまう内容を2時間近くかけて追っていくのが『CATS』。
セリフらしいセリフはほぼなし、自己紹介代わりに続く猫のパフォーマンスをひたすら追っていって、1匹の猫を選んで、終わり。映画にするには流石にちょっと奥行きに欠ける。伏線とか陰謀とかそういうのもない。
何処までもミュージカル要素に力を入れた作品だから、原作自体もかなり好き嫌いが別れると思うし、何より1回見ただけでは意味がわからない。劇団四季の『CATS』を初めて見た小学生の頃、「ジェリクルキャッツって何度も言ってるけどそれ結局なんなの💢💢」ともやもやしながら帰ったのが懐かしい。

でも多分『CATS』にどういう意味もくそもない。それ以上の説明が劇中でなされていないので、そのまま飲み込むしかない。「グリザベラは死んだの?」とか「マキャヴィティはなぜ魔法が使えるの?」とか「ヴィクトリアの3つの名前って結局何なの?」とか「お前めっちゃ話しかけてくるけど名乗れよ」とか、本当気にしたら負けだから...これ...。
その曖昧さ、不透明さが、2Dにした時面白くない、に変換されてしまう気がした。



②「劇はハードル高いけど、映画なら」が引き起こしたバグ
演劇と映画って、一般に馴染みがあるかないかで大きな差があると思うんですよね。
少しズレますが、なんというか演劇っていかに滑稽か!!みたいなところがあると思っていて。いきなり歌い出したり踊り出したり。それが良さだけどそれが嫌という人もいる。そしてその滑稽さは演劇だから許されるのであって、映画で表現する滑稽さとは全く違う。
ところで、気になってた演劇作品が¥1000ちょっとで見れるんだ!ってなったら見に行くよね〜うんうん。でもそれがやっぱり危険というか、酷評が集まった要因でもあるのかなと。
何件かレビューを読んだ中で、「映画、人間が猫に化けてるのが気持ち悪い」みたいなのがあってびっくりしちゃった。え、そこから!?みたいな。それは原作からそうなのであって、もう映画云々関係ないやんそれは『CATS』そのものに対するものやん...と思ったり。永遠に歌い続けていて訳が分からない、とかもあった。ミュージカル作品だからまぁ多少はそうでしょうよ。逆に私は、映画用に付け足したセリフの方が気になってしまった。
そこで私は思ったのです。演劇の滑稽さってやっぱり一般にはウケにくいのかも、と。演劇と映画の溝は思った以上に深いのかも、と...‪( ᵕ ᵕ̩̩ )‬

つまりこの作品は現時点で、原作を好きな人も原作を知らない人も楽しめないという結果に。



③カメラで追いかけるという愚行
これだけセリフのない作品をフレームで切り取って追いかけちゃうのは...もうどう考えても駄目でしょう...。
音楽番組とかでもよく思うんですけど、ダンスが見たいのに只管顔のアップとか映されてご覧なさいって話ですよ。ソロの見せ場だからって1人をアップで映すというのも然り。ヴィクトリアが猫達の合間を縫って華麗に舞うシーン、カメラで追っちゃったらどれだけ激しく動いてるか伝わらんやないか!!!と不満爆発。
エキストラの扱い(映し方)も演劇と映画で全然違うから、そういう所もいまいち納得いかなかった。でもしょうがないのよね。演劇を映画にしたんだから。そうなっちゃうのよね。

『CATS』をよう知らん人でも聴いたことがあるであろう、グリザベラ「memory」の名シーン。あそこも顔のアップで残念だった。でもそれが映画。逆に全身映るぐらいの引きで撮ってる方が違和感でしょうね。だからこそ『CATS』はとことん映画化に向いてなかった。



アレンジは原作ファンの反感買わん?
ラムタムのキー変更とかまではまぁ、まだ分かる。デュトロノミーが雌猫になってたのは大丈夫なんですか?ミストフェリーズが結構気弱な性格だったり、ボンバルリーナの見た目が全然違ってたり...いやファンが良いならいいんですけどね!!良いって言ってるレビュー1個も見てないけど。





◎何故もう一度見たいのか
簡単な話、私が『CATS』にわかだからです。多分この映画を1番楽しめる人は、『CATS』をそれなりに知っていて、でもガチガチにこだわりがあるわけでもない人。凄く中途半端な層は食べれる気がする。でもそこに『CATS』本来の魅力が詰まってるかは別ですけどね〜ガチファンから見たら今すぐにでも上映打ち切って欲しいだろうなぁ。
ヴィクトリアの別名を探してる時のダンスシーンとか、もう映像で見たら謎構成、謎時間、謎アングル過ぎて最高に虚無を誘う感じで面白かったので、そういった意味でももう一度見たい。あと純粋にバレエのモーションは凄く綺麗で見てて楽しかった。

あと劇中歌、元々はジェリクルソングスが好きだったんですけど、テイラー書き下ろしの『Beautiful ghost』が凄く良かったので、別個で褒め倒したい。ヴィクトリアVer.とテイラーVer.とあります◎

↓Jellicle songs for Jellicle cats
↓Beautiful ghost / Victoria Ver.
↓Beautiful ghost / Taylor Ver.